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妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

妖怪うぃき訳「源頼光と四天王+αの酒呑童子討伐」

平安の頃。

大江山に悪名高い鬼がいた。その名も「酒呑童子」。酒呑童子は五十を超える鬼を従え、女を攫っては害すなどの悪行の限りを尽くしていた。

都を蹂躙され、我慢も限界に達した帝は、朝家の守護として信頼の厚かった源頼光に大江山酒呑童子討伐を命じた。

 

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 ※左から、源頼光(みなもとのよりみつ/らいこう)、渡辺綱(わたなべのつな)、坂田金時(さかたのきんとき)、卜部季武(うらべのすえたけ)、碓井貞光(うすいさだみつ)、藤原保昌(ふじわらのやすまさ)

 

 

帝「ーーと、言うわけで頼光クン。君たち強いんでしょ? 鬼退治よろしくね~」

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頼光「はい頑張ります。ですよね皆さん?」

四天王+α「うぃ~っす」

 

6人寄れば文殊の知恵×2。普通に攻め込んだのでは勝ち目はないだろうと踏んだ頼光一行は、まず変装作戦を実行。山伏の姿となり、鬼達を欺く作戦。シンプルイズベストの古典だ。

更にしっかりとお祈りとお清めをし、全員が「生きて帰る事は出来ないかも知れない」という覚悟で、大江山へと出発した。

 

保昌「ところで何で俺だけ+αなわけ?」

綱「黙れリア充。どうせ道長様繋がりだろうに。頼光殿が道長様に信頼されてなければお前なんか……」

金時「綱さんは和泉式部のファンでしたからね。和泉式部と結婚した保昌さんが許せないんですよ」

保昌「よく言うよ。綱さんの親父さんは紫式部の書いた源氏物語のモデルになってるくせに」

貞光「綱さんもイケメンだもんなぁ」

卜部「しかしイケメンでも結果が伴わないと」

頼光「皆さん、うるさいです。ほら、あすこに妖しいご老人がいますよ」

卜部「所謂一つのイベントな気がします」

 

 出発してすぐ、一行の前に小屋が現れ、小屋の中には三人の爺様がいた。

 

老人「あんたらはもしや頼光様御一行じゃないかぇ? ワシらは件の酒呑童子に妻子を奪われて嘆き悲しんでおったのじゃ。見たところ酒呑童子討伐に向かうようじゃが、ワシらが道案内してやろう。更に鬼に効くという幻の酒、『神便鬼毒』を差し上げよう。これは神の方便、鬼の毒酒という意味の酒で、鬼が飲めば毒となり、人が飲めば薬となる。更に更に今だけオマケで、無敵の防具『ほし兜』も差し上げましょう。これを身に着けて酒呑童子をやっつけて欲しいのじゃ」

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頼光「皆さん! なんだか色々貰いましたよ!」

綱「うぉぉぉやったぜぇぇ!」

金時「ただのご老人ではありませんね!」

卜部「このご老人達は三社の神々の権化……という風に解釈すると話がスムーズかと」

綱「おい季武。卜部姓が占術筋だってのは知ってるが、あんまり妙なネタバレは止めてくれよな」

卜部「……はい」

 

こうして一行はいきなり最強の防具とアイテムを手に入れ、意気揚々と丹後は大江山へと歩を進めた。すると今度は妖しい女が一行の前に現れた。女は泣きながら血の着いた着物を洗っていた。

 

金時「頼光さん! あの女絶対鬼ですよ! いかにもワナっぽいです」

頼光「金ちゃん、勝手な先入観で女性を鬼扱いしては失礼ですよ。僕が紳士らしくたずねてみます」

金時「はぁ」

頼光「もしそこのお方。あなたは鬼ですか?」

金時「え……」

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女「いいえ違います」

頼光「ほら、鬼では無いようですよ」

金時「信じちゃうんですか……」

女「私は酒呑童子に囚われている身です。酒呑童子は大層恐ろしく――あ、グロ耐性ありますか?」

貞光「やんわりとなら」

女「わかりました。酒呑童子は恐ろしく、攫ってきた娘たちを切り裂き、生き血を飲んだり食べたりしているのです。今私は殺された娘達の着物をこうして洗っているところなのですが、どうやら今晩は私が殺される番のようで……あぁ! 頼光御一行様! どうか酒呑童子を退治して下さいまし!」

 綱「安心しろぃ! そのために俺達は来たんだぜ!」

女「ありがとうございます! 酒呑童子はいつもお酒を飲んでいます。きっとあなた方が持つそのチートアイテムを使えば酒呑童子だって……。あぁ、あなた方の背後にご来光が見える! 頼光だけに」

頼光「……」

 

頼光一行は女に酒呑童子の住処の場所を聞き、意を決して進み続けた。

ほどなくして鉄の門が現れ、門前には門番の鬼達が群がっているのが見えた。

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金時「うわぁ! 鬼だぁ!」

綱「ったりめぇだろキンタマ野郎。鬼退治に来て鬼見てビビッてどうすんだよ」

鬼「ぬん!? 怪しいヤツらがいるぞ!」

卜部「こうやって見つかるのはセオリーですね」

鬼「おい貴様ら! 丁度俺も腹が減ってたところだ。観念してこっちへ来い!」

金時「どどどどどどどうします???」

頼光「金ちゃん。あなたのその大げさなリアクションには毎度辟易しますよ。いいですか、こういう場合は堂々としている方がいいのです」

鬼「おい!」

頼光「こんにちは鬼さん。実は僕達道に迷ってしまいまして。どうやら運よく大鬼酒呑童子様の住処へと辿り着けたみたいだ。丁度最高に美味いお酒も持っておりますし、どうか一晩泊めていただけないでしょうか?」

鬼「泊めてくれだぁ? 怪しいヤツラだな……。まぁいい、俺の独断で食っちまうわけにもいかねぇ。お頭に判断してもらうか。ついてこい!」

卜部「しかし随分スムーズですね」

綱「季武、黙れ」

 

中に通された一行は、遂に念願の酒呑童子と対面する。

しかし酒呑童子は鬼の姿では無く、人に化けた姿で現れた。

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酒呑童子「何の用でぃ?」

頼光「僕らはただの旅僧でございます。修行の為に山中を歩いていたところ、道に迷いかの名高い酒呑童子様の住処へ辿り着きました。これも何かの縁だろうと思い、図々しくも一晩宿を貸しては頂けぬかとお願いしたい所存です。ただで、とは言いません。丁度持参していた幻の酒も差し上げます」

酒呑童子「たまたま迷い、ここへ辿り着いたと? ……ふむ。客僧らも腹が減っているだろう。まずは何か食わせてやろう」

 

酒呑童子は頼光らを信用しなかった。その為、まずは度胸試し、と攫った娘達の生き血と、娘達の切断した身体を酒の肴として頼光らに勧めた。

 

金時「頼光さん……僕はこういうの無理ですよ……」

貞光「俺もパス」

卜部「つまりそれは死亡フラグというヤツで」

保昌「頼光さん、俺も嫁に人食ったなんて言えないよ……」

綱「フン! リア充もキンタマも占い師も影薄も度胸がねぇなぁ! どれ、俺が血を飲んでやらぁ! ゴクゴクゴク(うっわクソマズぃ)。うめぇ!!」

金時「(綱さん男です!)」

頼光「全く。腹を括ってここまで来たんじゃないんですか? いいでしょう、僕は美味しそうなフトモモを頂きます。モグモグモグ(あれ、案外……)」

酒呑童子「どうだ? 美味いだろう?」

頼光「最高に美味です。どうやら酒呑童子様は僕らを疑っていてこのような料理を勧めたようですね。しかし僕らは修行の身。例えどんな厭なものであろうとも、与えてくだすったものは頂くのが当然。いつ死ぬかもわからないこの儚い世に、我儘を言う贅沢など許されないのです」

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酒呑童子「ふむ。……そうか、つい疑ってしまい申し訳なかったな。どれ、今度こそ共に祝杯を挙げよう」

 

頼光らの肝の据わった様に、酒呑童子の警戒心も次第に薄れていった。

頼光が持参した酒も飲み、酒呑童子も酔いが回って饒舌になった。酒呑童子は酔った口で自身の話を始めた。

 

酒呑童子「俺様は捨て子だった。昔っから法師が嫌いでな、沢山の法師どもを殺してきた。比叡山が俺様のお気に入りで、そこにずっと住んでいたかったんだが、伝教大師っつぅ野郎が俺を追い出した。この大江山も昔は弘法大師がいやがったんだが、今は俺様の天下さ。都から娘を攫って毎晩楽しんでる。本当は都に住んじまいたいんだが……都には頼光っつぅ名前の極悪人がいやがるんだ」

金時(ドキッ!)

酒呑童子「頼光には邪魔くさい配下がいっぱいいてな、中でも渡辺綱ってやつは俺様の相棒、茨木童子の腕を切りやがったんだ。そういう邪魔なヤツラがいるせいで、俺様は都に行けねぇんだよ」

綱「(へへへ、どうだいキンタマ。俺は鬼にも恐れられてんだぞ)」

金時「(すごいですけど……疑われてませんかね?)」

酒呑童子「ところで――あんた達、なんだか頼光らに似てる気がするんだが……。そこの男なんか渡辺綱によく似てるような気が……」

頼光「あははははは。イヤだなぁ酒呑童子様。そんな大悪人に僕等が似ている? それは喜んでいいのか悲しむべきなのか解りませんね。そもそもその方達の名前すら初めて聞きました」

酒呑童子「ふむ、まぁ、そうだな。また疑って悪かった。どうしてもいつも頼光らの動向が気になってしまってな。ささ、もっと飲んで飲んで」

 

なんとか疑いを晴らした頼光一行。酒は進み、酒呑童子も鬼達にも、神便鬼毒酒が効いていった。

 

酒呑童子「さて客僧達。俺様はちょいと眠くなってきた。奥で寝るから、気にせずにどうかゆっくりとくつろいで行ってくれ」

頼光「ありがとうございます」

 綱「鬼さん方、親分は引っ込んじまったが、まだ飲み足りねぇだろぉ? ほらほら飲んだ飲んだ!」

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すっかり酒が効いてきた酒呑童子と鬼達。もう身動きが取れる鬼もいなくなった頃、頼光は酒呑童子の言いなりとなっていた娘達に声を掛けた。

 

保昌「パンティー何色?」

娘「ヒョウ柄でございます」

頼光「こら、奥さんに言いつけますよ。酔っ払いリア充はあちらの鬼さん達の上で和歌でも読んでいて下さい」

保昌「はーい」

頼光「ご無礼をお許し下さい。僕らは帝の勅命により酒呑童子討伐に参りました。酒呑童子のいる寝所を教えては貰えませんか?」

娘「あぁ! 神様! 私達は命あることすら怨めしく思える程に辛い仕打ちを受けてきました。それがやっと救われるのですね!」

 

娘達は喜び、頼光らに寝所の場所を教えた。

いざ決戦。各々老人に貰った武具などを身に着け、酒呑童子のいる寝所へと向かった。

寝所から見える酒呑童子の姿は、先ほどまでの人の姿では無く、おぞましい鬼となっていた。

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金時「ひゃあ!! 大鬼だ!!」

綱「おいキンタマ。二度目はつっこまねぇぞ」

卜部「テンドン、という言葉があってですね――」

頼光「皆さん、ふざけている場合ではありませんよ。今こそ酒呑童子を討つ時! 準備はいいですか?」

金時「あれ? 保昌さんがいませんけど……」

綱「おい、あいつ鬼達の上で和歌読んでるぞ。何でだ?」

頼光「保昌さん! 何意味解らないことしてるんですか! 早く来て下さい!」

保昌「だってあんたが……」

金時「大変です! 碓井さんも見当たりません!」

貞光「いや、ここにいるけど……」

頼光「貞光さん! もっと主張してください」

貞光「は……はい……」

 

 寝所から覗く酒呑童子の本当の姿に怯えつつも、頼光一行は寝所に突撃した。

酒呑童子は神便鬼毒酒の効果で弱っており、頼光達は比較的容易に酒呑童子に切りかかる事ができた。

 

酒呑童子「おのれ貴様ら! 結局俺様を騙していたんだな! 鬼! 悪魔!」

頼光「鬼に鬼と呼ばれる筋合いはありません! 覚悟!」

 

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頼光は酒呑童子の首を切り落とした。しかししぶとい酒呑童子は、頭だけになっても頼光に襲い掛かり、頭に喰らいついてきた。だが頼光の身に着けた『ほし兜』が、酒呑童子の牙を退け、頼光を守った。

 

卜部「これで一応全ての伏線は回収できましたね」

綱「まだだ。まだ他の鬼達が残ってるぜ!」

 

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残った鬼の掃討戦。酒呑童子の配下の茨木童子、いくしま童子ら数匹の鬼が襲い掛かかる。

 

綱「またお前か! 今度こそ仕留めてみせるぞ!」

茨木童子「前回はまぐれだ渡辺綱! そっくりそのままそのセリフを返して――グワアァァァァ!」

 

かくして頼光一行は酒呑童子一味を掃討した。

娘達も解放し、帰路へ着いた頼光一行を都は民も武士も総出で出迎えた。

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頼光「皆さん、お疲れ様でした」

金時「いや~、生の鬼は怖かったですね~」

綱「フン、大したこと無かったぜ」

卜部「でも正直ご老人方の道具が無ければやられてましたよね」

貞光「そんなこと無いぜよ」

卜部「碓井さんは最後までキャラが定まりませんでしたね」

貞光「……だってさ……」

保昌「では最後に一句詠ませて頂きましょう」

頼光「あ、保昌さんそういうのいいです」

保昌「あ、はい」

 

 

都へ戻った頼光一行は、帝から言葉にできない程感謝され、褒美を与えられた。更に民の間でも永く語り継がれることとなる。

源頼光、彼こそ最高の武士(もののふ)に違いない、と――。

 

 

酒呑童子討伐の物語は、見方に依っては全く異なる解釈もできます。頼光らが酒呑童子を征伐する際の行動は酒呑童子が主張するように「騙し討ち」であり、頼光の方が悪いヤツ、という風に解釈することもできます。

おとぎ話というのは往々にして時代背景や様々な揶揄が込められている場合が多く、この酒呑童子討伐も、「土着の者(この場合酒呑童子)を武力でもって追い出そうとする有力者の強引な所業」と見る解釈もあるようです。

多数のバリエーションのある酒呑童子討伐の物語ですが、ちょっと視点を変えるだけで、その時代の様々な「想い」が見えるかも知れません。

 

本当の「鬼」はどっちなのか? 今の僕には解りませぬ。

 

 

参考・御伽草紙

画像・大江山酒天童子絵巻物