妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

酒呑童子と新年の酒を飲んだ話

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酒呑童子(しゅてんどうじ)

 

あす!

 

……高校の時からな、あけましておめでとうございます本年もよろしくお願いします、って全部言うのが面倒だから、頭とケツだけ取って「あす」にしたら流行るんじゃね? って思って一人で言ってたんだが流行んないんだよな。

チキショータカシだぞ。

 

正月と言えば、何年か前に近場の山に初日の出見に行った時に酒呑童子と会ったことあるんだよ。結構レアだろ?

どうしてもあの時のこと思い出すんだよな。

 

ーーその日は俺の彼女が正月なのにどうしても出勤しなくちゃならなくなって、ふてくされて一人で初日の出見に行ったんだわ。

 

で、周りのリア充が初日の出に歓声上げる中、しんみりと御来光を拝んで、ささっと帰ろうとしたら……小さい男の子が一人初日の出眺めながらパックの酒飲んでたんだよ。しかも古臭いちゃんちゃんこ羽織ってて、それも目に付いたな。

 

思わず笑ったよ。酒飲んでるのはまぁ正月だからいいかなと思ったけど、何より飲みっぷりが良くてな。確か「鬼ごろし」飲んでたと思うんだけど、パックの口を噛みちぎって、ゴクゴク飲んでたんだわ。

「一人で来たの?」

試しに俺は聞いてみたんだ。

そしたら目を丸くして驚いて、「俺様が見えるのか?」って言われたんだわ。

そこで俺はピンと来た。そうかこいつも妖怪なのか、ってな。それに言い回しも子供のじゃなかったしな。声は可愛い子供なんだけどさ。

 

なんかその妖怪も嬉しそうだったし、幸い俺も帰ってやる事なんか無いから、そのまま一緒に飲むことにしたんだ。寒かったけど、元旦に朝からやってる飲み屋もなさそうだしな。

 

ーーで、すぐにその妖怪が酒呑童子だってことを知ったんだ。酒呑童子と言えば鬼の大将って言われてるぐらいの大物だろ?  てか酒呑童子なんて創作妖怪だと思ってたしな。

なるほど、本当に童子だったわけだ。酒もよく飲む、豪快に笑う。全然悪いヤツには思えなかったな。しかも鬼の姿じゃないから、つい俺も偉そうに喋っちゃうんだよ。あの酒呑童子に、だぞ。

 

「ーーてかさ、何であんたみたいな大妖怪が一人で元旦に酒飲んでたわけ?」

「ほっとけ糞坊主。茨木童子と待ち合わせしてたんだけど山を間違えちゃったみたいでな」

因みに茨木童子っていうのは昔話にも出てくる、酒呑童子の一番の親友みたいな鬼のことな。

「だっせぇなぁ。まぁ俺も彼女にすっぽかされてたんだけど」

「彼女、ってのは女のことか? 俺様も昔は随分女攫ったもんだが、最近のはダメだ。匂いもクセぇし品が無ぇ」

「それはあんたが古い妖怪だからだろ。わかんないだけだ」

「ふん」

「それより童子さん、今でもやっぱり鬼の中で一番偉いの?」

俺がそう聞いた途端、急に酒呑童子が大人しくなっちゃってな。なんか聞いちゃマズイことだったんだよな。

「……いや、今じゃあ隠居みたいなもんだな。何しろ源勢に退治されて、鬼達の信用を失っちまったからな。お前らにとっちゃ遥か昔かも知れないが、俺様には昨日の出来事のようだよ。それに、今では鬼そのものの数が激減しちまってる。俺様のこと知らない鬼だっているかもしんねぇ」

何かリアルな過去の鬼の大将のぼやき、って感じでこっちもしんみりしちゃったよ。ただもう一つ、聞いときたかったことも聞いちゃったんだ。ほら、俺も遠慮しないタイプだからな。

「ていうか童子さん。源頼光一派の酒呑童子退治とか土蜘蛛退治って作り話じゃないの?」

「そりゃあ随分細かいとこは違ってる。けど事実俺様は退治されたし、あの時の頼光らの顔も一時たりとも忘れた事はねぇよ」

酒呑童子はそう言いながら首をさすってた。多分、首を切られた時の事を思い出してたんだろうな。

しかも意外と繊細みたいで、頼光なんていない現代でも、源姓を見るとちょっと身構えちゃうらしい。

「俺様は人間らの世界の事は良くわかんねぇけど、今の世の中には女でこえぇ源姓のヤツがいるらしい。源しずか、って女、しらねぇか?」

童子さんそれドラ○もんだわ。

なんか面白いから俺も悪ノリして、

「あぁ、その人をやっつけるには凶暴な猫たぬきも退治しなきゃなんないんで、多分童子さんでもキツイかも知れないな」

って教えといたわ。

でも酒呑童子、がははって笑って、

「なぁに、今の世のしょぼさは証明済みよぅ。見ろ、俺様が飲んでるこの酒! 鬼ごろし、って書いてあるがちっとも効きゃあしねぇよ。頼光らに盛られた酒の方がよっぽど効くわぃ。それに俺様を斬った刀だってどっかに飾ってあるんだろう? 愚か愚か! 恐いモノ無しだ」

……まぁいっか。

って感じで色々ツッコむのも止めてその後は酒呑童子の愚痴を聞きながら飲み続けたよ。

最後に帰る時、鬼とは思えない一言を言われたのがすげぇ印象的だったな。

「親には尽くせよ」

酒呑童子は最後にそう言ったんだ。

 

 

ーー後で調べて知ったんだが、酒呑童子って元は妖怪じゃなくて普通の人間だったんだよな。それが、捨てられて、鬼になっちまったんだ。

一説では「捨て童子」が転じて酒呑童子になったって説もある。

数々の悪行も、鬼になったことも、実は愛情に飢えてただけなのかもな。そう考えると、あの日の酒呑童子の最後の言葉もなんとなく理解できるんだよな。

 

とにかく正月になる度に、また酒呑童子に会えないかなぁ、なんて思うようになっちまったんだ。次に会ったら、「しずかちゃん討伐は順調?」って聞くつもりだ。

もしどこかの山で、酒を豪快に飲むクソガキを見つけたら、ぜひ声掛けてみてくれよ。多分、面白い話一杯聞かせてくれるはずだから。