妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

骨の髄まで愛してる

こんばんは里中です。

この季節になると、副業の妖怪相談所には雪が絡む妖怪の相談が多くなります。
やはり雪は、視界も悪くなる、しんと静まりかえる、寒さで頭も上手く働かなくなるーーなどの様々な要因から妖怪目撃が増えるのです。
ほとんどは見間違えなわけですが、中には本物もいます。しかし雪に絡む妖怪はおしなべて季節に反し温厚ですから、見てしまったところで何かが起きる可能性は低いでしょう。
 
ーーそんな相談に紛れ、かなりおぞましい相談があったのでご紹介します。
 
 
僕の相談所を訪れたある男性が、入ってくるなり顔を真っ青にしてこう言いました。
「俺の彼女を見て欲しいんです」
一体何事かと思いましたが、とにかく男性は真剣な様子で、僕の手を取りどこかへ連れて行こうとするのです。
幸か不幸か、丁度相談所を閉める時間でしたし、男性は何を聞いても「とにかく来てくれ」の一点張りだったので、仕方なく男性に従うことにしました。
 
驚くことに男性に連れられて行った先は相談所から五分ぐらいの場所にあるマンションで、マンションのロビーには警官が二人立っていました。警官は男性を待っていた様子でしたが、男性は警官を無視して僕を部屋の前へと導きました。
 
「この中に俺の彼女がいます。ただ見て欲しい。お願いします!」
 
僕はただただ困惑し、一体何を見せられるのかと怯えていました。警官も来ているし、きっと何か恐ろしいモノが中にいる(ある)に違いない……。
僕はどうか可愛い妖怪が居てくれ、と念じながら男性の部屋のドアを開けました。
少し散らかっている以外、特に変わった点の無い廊下、そして奥に見えるリビングと思われる部屋。僕は靴を脱ぎ、静かに廊下へと足を踏み出しました。
そしてリビングの中を恐る恐る覗き、絶句しました。
 
「俺の彼女です。どうです? 何か変わってますか?」
 
僕の背後について来ていた男性が不安気に言いました。
 
何か変わっているか? 
 
大いに変わっている!
 
僕がリビングで見たのは、きちんと洋服を着た、骸骨だったのです。
 
「今朝隣人に変な疑いを持たれて通報されちゃいまして。俺が死体と暮らしてるって言うんです。どう見たって最高に美人で可愛い、人間なのに……」
 
男性は涙ぐみながらそう言いました。
僕は咄嗟に、妖怪「骨女」を思い出していました。

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骨女(ほねおんな)

妖怪「骨女」は、生前恋していた男性の元へ骨になっても通い詰めるという逸話を持つ妖怪です。
目の前の骸骨が妖怪であれば僕としては済む話だったのですが、いくら見ていてもその骸骨はピクリとも動かないのです。
それに、僕が妖怪を見る際に感じる、あの独特の嫌悪感のようなものもありませんでした。としたら……本物の人間の骨?
 
この骸骨の謎を解明する上で気になっていたことを僕は男性に聞いてみました。
 
「なぜ、妖怪相談を請け負っている僕の所へ来ようと思ったのですか?」
 
男性は少し口ごもりましたが、ここ数日間、何度か彼女が骸骨の姿で鏡に映っているのを見てしまったから――と教えてくれました。
そして今朝通報されてしまい、慌てて、男性にとっては「霊的なモノ」を扱うのと同じに思われていた妖怪相談所に駆け込んだらしいのです。
 
男性にとってはただの骨が愛する恋人に見える。
しかし鏡等を介せば真実が見えてしまう。
そして大事なことは、これは妖怪が関わっている事件では無い。
妖怪が人の心に生まれるプロセスそのものな事件ではありますが、実際の妖怪が見える僕にとっては「人の心に沸く妖怪」は専門外です。
 
としたら、僕がこの男性に言ってやれる言葉は一つしかありません。
 
「病院へ行きましょう」
 
 
 
――近所だった事もあり、事件の顛末と男性についての噂はつぶさに聞くことができました。それによると、
 
・男性は長年同棲していた恋人と登山中に遭難し、重度の記憶喪失になったらしい。また、救出されて助かったのは男性だけだった。
・男性はどうやってか、恋人の骨を(噂では誰のか解らない骨)持ち帰った。
・マンションの男性の部屋からは夜の営みの音もかなりしたらしい。骨と……?
・どれだけ医者や、警官や、隣人に説得されても、その骸骨を骨とは認めず、現在は骨をDNA鑑定に出していて結果待ちだとか。
 
愛する気持ちが、目に見えるモノまでも捻じ曲げてしまう。
他の誰にも見えないモノが、ある人には見えてしまう。
 
このおぞましい事件に触れ、僕は自分が妖怪を見ることができるのも、この男性の例と何ら変わりないことなんじゃないか? と思うようになりました。
 
僕が見えると思っている妖怪達も、もしかしたらただ僕の心が沸かせた虚像なのかも知れない。
一番歯がゆいのは、それが嘘か真かを調べる術が無い(恐らくは今後も永遠に)ということでしょう。
 
嘘が真かも知れないし、真が嘘かも知れない。絶対に、永遠に、解らない。
そんな曖昧で不明瞭な所に、妖怪は巣食っているように思います。