妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

華厳の滝にも滝霊王がいる

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滝霊王(たきれいおう)

 

里中です。

数年前に日光へ心霊現象やある妖怪の取材で行った際、華厳の滝での妖怪の話を場末の露天商を営むおじいさんから聞いたので紹介いたします。僕の勝手なイメージでの華厳の滝への誤った解釈も、このおじいさんに教えられて修正することができました。

 

――おぉおぉ、東京から来たんですかぁ。東照宮ですか? ……あぁ、華厳の滝ですかぁ。あれはいいでしょう。中禅寺湖も一緒に見て回るとなお感慨深い。

え? 自殺者ですか?

あぁ、なんだ。そういうのに釣られて来たのかい。

その噂――つまり自殺の名所っていうのは、随分大げさで望ましくないイメェジなんですよ。っていうのもですね、明治時代にとある男が思いの丈を書き殴った遺書を、滝のテッペンで樫の木に掘りこんで自殺したんです。これが当時影響しちゃいまして、後へ続く者がたくさん出ちゃったんですね。ただ、今はフェンスもありますし、なかなか簡単にはそこへたどり着けないようになってます。それに今は自殺者なんていない。本当に、ゼロですよ。それが明治時代の話を引きずって未だにそう言われちゃうんだから怖いもんですよ。

あなたも、見てきたんでしょう? あんな凄まじい迫力の滝の、てっぺんに立とうなんて猛者が現代にいるとは思えませんしね。はは。

 

……心霊写真ですか? あのねぇ、あんたももっと純粋に観光していったらいいのに。華厳の滝での心霊写真なんか、全部解明されてるじゃないですか。よくこの辺りにも血相変えたカップルが来て、儂に見せてきたりするんですけどね……。「ほら、ここに映っちゃったんです!」とかって指を指されるんですけど、どう見たってただの岩。「ここが目で、ここが鼻で……」とか言われてもですね、それを言ったらこの写真全部心霊写真じゃないですか、ってなもんですよ。雲を指差して「あ! 人の顔だ!」って言うのとなんら変わりないですね。これも悪いイメージのせいで、みなさんそう思い込んじゃうんですよね。滝壺正面の観瀑台なんかは気温もぐっと下がるし、水しぶきも凄いし、薄暗いしで、ある種特殊な雰囲気ですから、なんだか霊とか映るような気になっちゃう――ってのもわからなくはないんですがね。

 

滝壺の妖怪?? ……へぇ、あんた、そういうの好きなんですか?

霊だ自殺だと聞いてくる輩は多いんですが、妖怪に触れる人は稀ですねぇ。いやいや、これは嬉しい。

まさかあんた……華厳の滝で滝霊王を見た?

見ちゃいないが調べてる……かい。

 

……そうそう。あんたの言うとおり、滝霊王は妖怪か神様かの区別も曖昧だ。何しろ絵では不動明王として描かれてるからねぇ。誰だっけ? 石の字が付く……そう!石燕だ。石燕の絵に付いた解説では、諸国の滝壺に現れる――とかなんとか。

儂も全然知らなかったんですがね、一度だけ、滝壺に神様を見たんですよ。

抽象的な表現じゃないですよ。本当に、見たンです。

あれは夏だったかなぁ。観光客も少なかったし、多分夏の終わりごろだと思うんですけどね。華厳の滝をぼうっと眺めてたら、滝壺に人がいるのが見えたんです。まさかと思いましたよ。その時には周りに誰もいなくってですね、誰かに見間違いじゃないか確認することもできなかったんです。仕方なく目を凝らして見てましたら――動いてるんですよ。なんだか手を動かしてるみたいでしたね。滝に打たれながら、です。

因みにですけど、あの水量の滝に打たれたら、人間は死んじゃうらしいですよ。つまり、あれは人間では有り得ない。

遠いですし、顔なんかわかりませんよ。ただ一つ言えるのは……なんだか楽しそうでしたね。それと、神々しかった。

帰ってから連れに話したりしたんですがね、誰一人として信じちゃくれなかった。ただ数人の観光協会の知人が、「滝霊王かもしれん」と教えてくれたんですよ。

 

あんまり盛り上がる話でもないですし、もう随分長い間誰にも言わずにいましたけど……いやいや、本当に嬉しい。滝壺の妖怪が、この雄大な華厳の滝に現れないわけはないんですよね。うん、そりゃそうだ。

明治の自殺した男ももしかしたら滝霊王を見たんじゃないですかね?

……理由? その男が樫の木に彫り込んだ遺書の一文を教えましょう。

最後にね、

「既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。

始めて知る、大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。」

って掘ってあるんですよ。どうです? なんだか感じませんかね? 妖気のようなものを。達観しちゃってます。

あなたももし霊だのっていうことを文章にしようとしてるなら、責任を持って書かなきゃいけませんよ。その男の文みたいにね、言葉が妖気を持っちゃう例も沢山あるんです。

言葉は時に人を殺す――んです。事実、その男の文章に感化されて同じように自殺する者が出たわけですからね。まぁ男の遺書は前半部分が濃いんですが。

……え? 滝霊王と関係無い?

……まぁ……そう言われれば……

ところであんた、喉乾いたんじゃないですかぃ?

ビールもあるし、焼きそばにあゆの塩焼きもありますよっ!