化け猫会議は意外と面白い
化け猫/猫又
この前、深夜に眠れなくってコンビニ行ったんだ。そん時に偶然、あり得ない光景目撃したからちょっと書く。
俺は今大学生で、22歳。普段からネトゲとか2ちゃんとかしちゃうせいで寝るのは大体朝方。だからコンビニも深夜によく行くんだ。本当はセブン派だけど、最寄りがローソンだから仕方なくいつもローソンに行く。深夜の店員はやる気無いのがデフォだけど、俺は案外あのだるそうな感じが好きだな。セブンの昼間とか、軍隊みたいなとこあるだろ? あれは逆にしんどいわ。
ただ、行きつけのローソン、深夜になると俺の好物のからあげクンを揚げなくなるんだよ。深夜こそ食べたいだろ? だから常連の俺は、ある日揚げてくれるように店員にお願いしたんだ。そしたらその店では深夜でもからあげクンとかやるようになったぞ。すごいべ?
で、その日もからあげクンとか酒とか買って帰ろうとしてたわけだ。
そのローソンまでの道の途中に、かなり古くさい感じの一軒家があって、多分誰も住んでない空き家になってたんだけど、その空き家の中にネコが数匹、ゾロゾロと入って行くのを偶然見ちゃったんだ。ネコがゾロゾロと空き家に入ってくんだぞ? 深夜だったっていうのもあるけど、なんか少し不気味だったな。もちろんネコにそんなに興味ないし、もっと言えば深夜に群れてるぬこになんか更に興味無い。若干不気味な雰囲気に怯えながら、その空き家を素通りしようとしたわけだ。そしたら突然――例えるなら、周波数が偶然ピタリと一致しちゃって聞きたくもない無線を傍受しちゃった――みたいな感じで、声がどこからか聞こえてきたんだよ。その道に人気なんか無かったし、周りを探してもあるのは空き家だけ。まさか? って思ったね。普段適当に使うような「まさか?」じゃなくて、心からの怯えと驚きを含んだ「まさか?」だぞ。
確か最初に聞こえたのは、「これより????を開催する」みたいな感じのことだった。まさか? ネコの会議? って本気で思ったよ。で、やめときゃいいのに暇だった俺は少しだけ空き家に近付いてみたんだ。ビビってたから、ほんとに少しだけだけどな。木造でボロボロだった空き家は、結構色んなとこに穴が開いちゃってて、丁度玄関の扉のすぐ横にある穴を覗いてみたんだ。
ぶっちゃけ、ほぼ何も見えなかった。月明かりがちょっとあるだけだったし。ただ、一匹だけ、全身真っ白なネコだけは視認できた。なんていうか……ちょっと光ってたんだ。そのネコが、だぞ。
口が動いてるとか、そういうのは全く見えなかったけど、声がするのは空き家の中からっていうのは間違いなかった。今でこそこうやって書いてるけど、その時はかなり怖かったぞ。目も口も多分開きっぱなしだったし、いくらかわいいぬこたんと言っても喋るとなりゃ別だろ?
――それでな、ネコ(たぶん)達の会話なんだけど、これが結構マジメで面白かったんだよ。覚えてる範囲で、語尾とかもそのまま思い出して書くからちょっと見てくれ。ちなみに、残念ながら「〇〇〇だニャ」とかは言ってなかったぞw
一応、カッコで俺の意見入れとくわ。言っとくけど、ネタでも釣りでも無いんだからな。頭おかしいと思われても仕方ないとは思うけど……ニャ。
「――つまり、猫又殿は人間の与えるエサは食べるべきではない、と?」
(猫又ってのは多分一番その中で偉いネコっぽかった)
「そう。だって人間がくれるエサが妙に美味く感じるようになってから、俺らの寿命が縮み出したんだぜ?」
(猫又さんはなぜか口調が砕けてて和んだ。因みに猫又さんは唯一見えてる白いネコさんだと思われる)
「私は我々の寿命と人間のくれるエサとは関係が無いように思うのですけど――」
「いや、関係あるよ。マタタビに似て、かなり中毒性のある色んな特殊な添加物が人間のエサには入ってる。あれってかなりヤバイんだぜ? 知らないの?」
「テンカブツ……ですか? 知りませんなぁ」
「まぁお前らみたいな三下の化け猫にゃあわかんないよね。例えばコンビニの残飯。お前ら大好きだろ? でも、あれって食い続けてると内臓が真っ黒になったり病気になったりするんだぜ?」
「でも……かなりの美味ですが」
「あのさ。それじゃあ困るんだよ。お前ら化け猫になれて何年経った? まだ数年だろ? 俺さ、ぶっちゃけもう猫又辞めたいの。てか隠居して発情してたいの。なのに猫又になる資格得るまで生きるネコが激減してるんだよ。迷惑なの。困ってるの」
「私達も長生きするつもりなのですが……」
「って言って死んでくのよ、みんな。お前、多分今月中に死ぬよ? 今のフラグだよ? わかってる?」
「フラグ……とは?」
「あぁ、もういいわ。俺、明日から宮城の猫神社巡りしなきゃいけないから今日はもう解散しようか」
(猫又さん、かなり短気でフリーダムなようです)
「猫神社! いいなぁ、猫又様。私も一度でいいから宮城の猫神社でかわいいネコに囲まれたいです」
「ふーん、あっそ。他になんかある? なきゃ終わりにするけど」
「なぜ猫神社は宮城県に集中しているのです?」
「はぁ? お前そんなの知らずに猫神社いいなぁ~、とか言ってたの? もう犬になっちまえよ。てかお前ら一応化け猫だろ? 化けて人間にでもなってネカフェでググって来い」
「あのな、蚕産業が盛んだった宮城で、ネズミ駆除に我らが役立ったから祀られとるんじゃ。wikiに書いてあったわい」
「そうだよジジイ。良く知ってるな偉いぞ――なんて言うかこのクソネコが。基礎だよ、基礎。はいもういいね、終わるよ?」
「猫又殿!」
「なに? まだあるの?」
「実は――先日三丁目の丸山家に住み込みとなったネコがですね……申し上げにくいのですが……無許可で子を五匹もうけまして……」
(ここでなぜか長い沈黙。怖かった)
「おい。あの地域はヤマブチの管轄だったな?」
「……は、はい」
「行くぞ」
「え? あ……はい!」
会話はそこで終了。俺は何だか嫌な予感がしたんだけど、そのままそこで覗いてた。そしたら突然、真っ白の体の猫が俺の目の前に屋根から降ってきたんだよ。
心臓が飛び出るかと思った。
ネコは無言でしばらく俺を見つめてた。
で――喋ったんだ。
「聞いたな?」
俺は思わずへたり込んで、ゆっくりと頷いちゃった。だって……なんかマジにやばい雰囲気だったから。
「今回だけは、その袋の中のからあげで許す。もし他の誰かにこの話をしようとしたら……」
白猫はそう言って俺を物凄い目で睨んだんだ。ネコの殺意に満ちた目っていうのはマジでヤバイぞ。
何も言えずにいた俺を無視して、白猫はローソンの袋を口でもぎ取って走り去った。さらにそれを合図にするかのように大量のネコが屋根から降ってきて俺の横を走っていったんだ。化け猫、すっげぇこぇぇ。
あの時ネコ達が話してた、三丁目の丸山って人の家、それから調べてみたんだよ。そしたらな、すごいことがわかった。なんと
ちょっと待ってくれ。何か誰か来たっぽい。親が留守だからちょっと見てくる。また戻ったら続き書くから待っててくれ