妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

若いカップルが山地乳(妖怪)に謝罪させたいと相談してきました

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山地乳(やまちち)

 

里中です。僕は妖怪や怪異のライターをする傍ら、こっそりと相談所のようなこともしています。それが元で新たに出会えた妖怪も数多くいますし、また正直なところ主要な収入源となってしまっているのもそっちなのです。

それはさておき――相談所に持ちかけられた話で、思わず僕も感心してしまった、妖怪を逆に利用した面白い話があったのでご紹介しましょう。

 

相談に来たのは若いカップルでした。怪異の相談等に来る方のほとんどが年配の方ですから、かなり珍しいケースでした。

このご時世には珍しく、そのカップルは妖怪や幽霊等を何の疑いもなく信じている、という興味深いカップルでした。聞けばカップルの女性の方が「見える」のだとか。

そして二人は、不気味な程に愛し合っている様子でした。いちいちお互いが意見する時に見つめ合い、はにかみあうのがイラついたのを今でも覚えています。

 

そんなカップルの相談内容は、

「山地乳に謝罪させたい」

という、これまた変わったものでした。

最初は「妖怪に悪さでもされたのか?」と僕も考えましたが、話を聞くにつれて一層このカップルの異常さに寒気がしてきました。そんなカップルの山地乳との話はこのようなものでした。

 

――カップルは、お互いを本当に愛していました。付き合いも高校生の時からだと言います。しかし、二人とも愛は永遠ではないことを知っていた。死が、愛を分かつのでは? と不安で仕方が無かった。(まだ20代前半ですよ、このお二人は。何を言っているんだか)

そんな時に二人は山地乳という妖怪のことを知ります。山地乳の伝承には、「寝ている最中に山地乳に生気を吸われる。しかし、もしその行為を誰かが目撃していれば、生気を吸われた人物は寿命が延びると言われている。逆に誰にも目撃されなければ、翌日には死んでしまう」というものがあります。あくまでもこれは一説でして、確証なんてどこにもありません。

しかし小さい時から霊感のあったカップルの女性は、その伝承の部分だけを信じ、彼氏と山地乳に生気を吸ってもらおうと考えたのです。

そして二人は「やまちちの宿」という名の、秋田県にあるとある民宿へと赴きました。その宿では山地乳が実際に出るということを売りにしていて、目撃したという噂も後が絶たない(あくまでも宿側の主張)らしいです。

カップルの本気さはすさまじく、貯金も全て使い、山地乳に二人とも生気を吸われるまでは何泊でもするつもりだったようです。

(後日、その宿に取材したところ、その時のカップルの様子を「異常だった。ありゃバカになってたね」と宿の主が語ってくれました)

 

――そして、カップルはその宿で一週間ほど過ごしたようです。当然、いつ山地乳が現れるかはわかりません。しかも、寿命を延ばすためにはどちらかが起きていてそれを目撃しなければならないのです。

自然と、体力に自信のあった男性が起きている役にあたりました。しかし夜通し彼女の寝顔を見ているのが楽である筈はありません(彼氏の方は一言もそんなことは言いませんでしたが)。

そして一週間、そんな監視を続けていたようです。その頃には彼氏にも限界が来ていて、監視もそっちのけでうたたねしてしまうことも多かったようです。――それが悲劇を生みました。

ガサゴソという物音。

彼氏は慌てて飛び起きたと言います。そして彼女の方を見ると……

黒い猿のような生物が、長く不気味な口を伸ばし、彼女に口づけをしていたというのです。(山地乳は、コウモリが長い年月をかけてなるものだと言われています。猿のような体については不明ですが、口が長いのはその名残でしょう)

「へぇ、本当に出たンだ。大成功じゃないか」

と僕は聞きながら思っていたのですが、彼氏の思考は全く別のところへ向かってしまったようです。

 

嫉妬。

 

激しい嫉妬。

 

見ず知らずの化け物が、愛する彼女にキスをしている。彼氏は怒りで奇声をあげてしまったようです。山地乳も驚いてすぐに逃げ、彼女も彼氏の奇声で目覚めてしまい……

 

 

と、このような内容。

百歩譲って、彼氏の嫉妬での怒りは理解できるとしましょう。不思議なのは彼女の態度。自分が彼氏を巻き込み、実際に山地乳が出たのに彼氏が台無しにしてしまった。だというのに彼女は、

「私の彼氏をこんなに怒らせた山地乳を絶対に許さない」

と言うのです。

もうわけがわかりません。

この相談に対し、僕が何かできるはずもありません。

穏やかな笑みで、首を静かに横に振りながら、

「無理です」

と僕はカップルに言いました。

 

山地乳云々よりも、異常な偏った「愛」のようなナニカを持ってしまったこのようなカップルの方が、よっぽど「妖怪的」だと思うのは僕だけでしょうか?