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妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

「硯の魂」っていうすげぇいいもん持ってるぞ

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硯の魂(すずりのたましい)

 

お前らはさ、どうせPS3だの3DSだのっていうゲーム機なんかを大事にしてるんだろ? あのな、そんなんだから彼女できねぇんだよ。まぁ俺もいないけど。

小学校の頃にな、俺んちにしまってあったらしい、かなり立派な硯をじいちゃんがくれたんだよ。硯って読めるか? スズリ、だぞ。書道とかで墨すったりするヤツな。

俺んちは昔っから続く米屋でな、戦争で一回焼けちゃったりしたらしいんだけど、地下に作ってある保管庫? みたいなとこはずっと変わらず100年以上前から残ってるんだってさ。で、この硯はその地下から出てきたやつらしい。丁度学校で書道の授業があって、みんな学校指定の使ってたわけだけど、アナーキーでイケてる俺はあえてその古めかしい硯使ってたわけだ。ぶっちゃけな、みんなと違うならなんだってよかったんだけどな。

ある日、書道の授業中に誰かが騒ぎ出したんだよな。

「波の音がしない?」

って。俺の学校、東京だったし、海とか全然遠いから、誰も相手にしなかったわけ。はぁ? 何言ってんだコイツ、って思いながらまた書に集中しようとしたらさ……俺の硯に波が立ってんの。情けないけどさ、俺その時、「うわぁ!」って叫んじゃったよ。うわぁ、なんて、なかなか言う機会無いぞ。言ってみろよ。キモチイイぞ。

これ、なんの誇張でもなく、なんていうかな、3D映像みたいに硯に海が出来て、波が立ってたんだよ。ただその時は俺が叫んでみんなが覗きに来たら消えちゃったんだけどな。

それ以降、学校では一回も見えなかったし、俺も気のせいだと思ってたんだ。そしたらある日俺の部屋で、また波の音が聞こえたんだよ。まさか!? ってすぐに気づいて、ランドセルの中の、ビラビラみたいなとこに強引に押し込んで放置してた硯を取り出してみたんだよ。

もうたまげたね。「たまげた」っていう表現も、普通に生活してたら言う機会無いよな。言ってみろよ。キモチイイから。

――とにかくな、硯にまた海が出来てて、波がざぁざぁいってたんだよ。硯からはみだしてるわけじゃないぞ。ただな、今回は本当にすごかったんだ。木でできた小さい船まで浮かんでて、鎧着た武士? みたいのがいっぱい乗ってて、弓とか撃ってんの。俺、クスリとかやったことないからな。一応。

その時、たぶん一時間ぐらいずっと見ちゃったな。その映像がなんなのかよくわかんないんだけど、結構グロいシーンもあったな。首に矢が刺さったり。あと、音も結構本格的だった。硯のどこから出力してんのか、そういうのに疎い俺にはよくわかんなかったわけだけど、とにかく面白かった。で、その時はふっと、何も無かったかのように消えちゃったんだ。なんのきっかけもなかったな。

俺は急いでじいちゃんに聞きに行ったよ。

「ナニコレすげーよありがとうじいちゃん!」

ってな。そしたらじいちゃん、ポカーンとしてたな。何のことかわかんなかったみたい。だから俺は親切に、その硯に起きたことをじいちゃんに教えてやったんだ。そしたらじいちゃん、「アホなこと言ってねぇで勉強しろ!」だと。どうやらじいちゃんもマジに知らなかったらしい。結局その時は信じてくれなかった。

その日からは、もう学校に持ってくのやめたよ。学校指定の書道セットに切り替えた。そもそも書道の授業なんてめったに無かったし、なんか俺だけの秘密ができてうれしかったし。同時に、一応小学生だったけど小学生なりに調べてもみた。

最初は、多分電化製品なんだろうと思ってたから、電気屋に聞きにいった。「これ、なんですか?」って。でもどこ行っても、「硯です」って言われるだけだった。まぁそりゃそうだ。

次に、文具店にも聞きに行った。そこでも↑と同じ反応。ただ、すげぇ人の好さそうなおっちゃんだったから、その硯の映像のこと話しちゃったんだよ。まぁ、誰かには言いたかったわけだ。最初は全然信じてくれなかったけど、俺がふてくされて帰ろうとしたら、「一応、調べといてあげるよ」って言ってくれた。

――で、一か月後かな。その文具店にまた行った時。

「なんでもっと早く来てくれなかったんだい?」って、おっちゃんちょっと怒ってた。ごめんなさい忘れてました。

おっちゃん、本当に調べてくれたみたいだった。いっつも暇そうな小さい文具店だったし、おっちゃん自身も本当にヒマだったんだろうな。

で、おっちゃん曰く、「その現象は、全て【硯の魂】っていう妖怪と一致する。妖怪っていうよりも、付喪神だな。たぶんキミが見たのは、源平合戦の映像……いや、映像っていうか、思念みたいなものなんじゃないかな?」って教えてくれた。

硯の魂……

多分、小学生だったからよかったんだと思うんだ。小学生だったから、妖怪とか付喪神とか言われても、全然疑わなかった。「なるほど」って素直に納得したもんな。大人になっちゃった今、そんなこと言われてたら、無視しただろうな。

その時文具店のおっちゃんは、「頼むから一回だけ見せてみてくれないか?」って言ってきた。俺はすぐに「やだ」って言って帰って来たよ。なんか媚びられた瞬間むかついたんだよね。

 

今も、一人暮らししてる俺のパソコンラックにはあの硯が置いてある。たまに、ほんとたまにだけど、源平合戦を見ることができる。ハッキリ言ってこれの楽しさはゲームとかの比じゃねぇぞ。まぁ、いつ再生されるかわからないのが玉にきずだけどな。

あと、この硯の魂、勝手な思い込みで俺しか見えないと思ってたんだけど、そんなことなかった。俺が主人公じゃなかったわけだ。

ちなみにそれを気付かせてくれたのは俺のじいちゃん。

また遡るけど、小学校の時、源平合戦再生中にじいちゃんが部屋に来たことがあった。確か羊羹分けに来てくれたんだった。

俺は、じいちゃんには見えないって信じてたから、普通にじいちゃんを中に入れたんだけど、じいちゃん硯見て羊羹落としやがったんだよ。見えちゃったんだよな。

そんときのじいちゃん、大声でさ、

「うわぁ!」

って言ったんだぜ。ダサイよな。