妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

「おさん狐」に乳首つままれた話

f:id:youkaiwiki:20120726170751j:plain

おさん狐

 

信じる信じないは別として、俺に起こったことありのままを書こうと思う。

 

俺は30過ぎのおっさんで、嫁も子供もいる。会社は有名ではないけどIT系。そこそこ給料もいい。

実は最近家を買った。都心部からはちょっと離れちゃうけど、会社までは一時間以内に行けるし、何より自然が多くていい場所だったから。

その時、家を建てる筈の敷地に、ちっちゃいお稲荷さんの祠が見つかったらしい。

これは後から不動産屋に聞いた話。ちょっとイヤな感じはしたけど、それを聞いても特にそこまで気にしなかった。まぁ、家の方が大事だしな。

 

新しく建った家はほんとに快適で、マジで人生の勝ち組になった気がしてた。嫁もすげぇ満足そうにしてたし、一人娘もはしゃいでた。

しかもその家が素晴らしいのは、周りに家が少なかったことだった。玄関開けたらすぐお隣があって、挨拶して――っていうような面倒なことが無い。少し離れた所に家があって、買い物で会ったら挨拶する感じがゆるい繋がりを保てていい、とか嫁も言ってた。

 

その家での生活にも慣れ始めてきた頃、嫁が近くの球技場でやってるテニスのサークルに入った(サークルって言っていいのかな? とにかくマダムとかが暇つぶしでやるようなやつね)。

それは毎週日曜だから、幸いにも土日休みを貰えてる俺は日曜だけはいつも娘と二人っきりになった。

 

嫁がテニス始めて二週間目だったかな。昼間、知らない女が俺の家を訪ねてきた。ものすごい美人で、肌なんか真っ白。どんな新手の勧誘だ? と身構えてたら、どうやらこの辺に越してきたんだと。もちろん、家を建てたばかりの俺も、最近ここに入ったばかりだと猛アピールした。そりゃ、美人だもん。

「今後ともよろしくお願いしますぅ」

とかって、妙に耳に残る甘ったるい声で言って、女は帰ってった。その時娘も俺と手を繋いで横にいたんだけど、娘がこんなことを言ったんだ。

「あの人、キツネさんだったよ」

は? って感じだった。よくわからんが、娘にはキツネに見えたらしい。キツネっぽい顔じゃなかったけど。

 

――で。ここまで読めばわかると思うんだけど、もちろんあのお稲荷さんが関係してるわけです。その時は気付いてなかったけど、よくよく振り返るとそうとしか思えない。とにかく、話を続けます。

 

それから、その女はたまに日曜日訪ねてくるようになった。

最初は本当に他愛も無い話をするだけだったんだけど(というか、そもそも他愛のない話をしに他の家の女が来ること自体おかしい。が、その時の俺はその女の美しさに舞い上がってて、むしろ惚れられた? とか思ってた。マジで)、その内短い時間ではあったけど家に上げてお茶飲んだりするようになった。

もちろん娘もいたんだけど、娘はいつも嫁に「今日もキツネさん来たよ~」とかって説明するから、嫁も全く相手にしてなかったみたい。

で、こっからはもう自我崩壊。

ぶっちゃけ惚れた。

女は自分の家の場所とか、プライベートなこと一切話さなかったけど、それでも俺は幸せだった。会社の愚痴とか、ただひたすら俺が話すんだけど、すげぇ優しい顔でちゃんと聞いてくれる。その時期にはもう毎週必ず来てくれるようになってたから、俺は日曜が待ち遠しくてたまらなかった。嫁を嫌いになったわけじゃないし、何の言い訳もできない浮気だけど、とにかくその女に惚れちゃったんだ。

でもたぶん、あっちも俺に気があるから毎週訪ねてくるんだろ? 両想いじゃねーか。なんて、中学生みたいなことも考えてた。

 

ある日曜。女が俺を家に誘ってきた。

「来週の日曜、私の家に来てくださいよ」って。

その時点でも、女のプライベートな情報は皆無だったんだけど、それでも俺は嬉しかったし、断れるわけなかった。

早速その日、嫁に来週の日曜はどうしても外出しなきゃいけない、と伝えて、娘をテニスへ連れて行ってくれるよう頼んだ。特に嫁も訝しんでなかったし、俺は最高にドキドキしてた。

で、約束の日。女はわざわざ俺を迎えに家の近くまで来てくれた。というか、携帯すら持ってなかったらしい女と、あらかじめ待ち合わせたんだけどね。

女の家は結構駅の近くにあって、賑やかなところだった。駅前の大通りに、不自然なくらい唐突に、綺麗な和風の城みたいなのが建ってて、そこが女の家だった。正直、気後れした。この女すげぇ金持ちのお嬢なんじゃねぇか? だからあんなにヒマそうに訪ねてきたんじゃ? とかって考えまくった。

女はそんな俺には構わず、どんどんとその城みたいな家に入ってく、俺もついていくしかなかった。

城みたいな家の中は、洋風の部屋と和風の部屋がめちゃくちゃに存在してて、なんだか迷路みたいだった。玄関――というかロビー? みたいな所から上がって、幅のやけにある階段を昇り、女の部屋だという一室へ案内された。そこまでの道で、気配はしたけど誰とも会わなかった。これは本当にラッキーだと思ってた。

 

女の部屋は、不気味なぐらいシンプルだった。テレビも無かったし、雑誌や漫画とかもなかったし。ただ綺麗な洋風のでかいベッドがあって、これまたおしゃれな洋風のタンスとかがあるだけだった。……正直、結構緊張してたから曖昧なんだけど。

で、何するの? と、最早緊張で下心すら忘れてた俺は、女の部屋で立ち尽くしてた。そしたら、女がいきなり俺に抱きついてきたんだ。

「は? ちょっと……」

「何? したかったんでしょ? スケベ」

江戸の町娘みたいなセリフに、俺の下心に火が点いた。俺はがむしゃらに女に抱きつき、服を脱がせた。俺も服を脱ぎ、女をベッドに倒し、あっちからじゃ恥ずかしいだろう、なんて親切心で俺から先に全裸になった。もうこの辺はサルです。

女は満足そうに笑いながら、俺の乳首を両手でつまんできた。

それがなんていうか……痛かった。

俺はつい、「いてぇ!」と叫んじゃった。

そしたら女は、突然気が狂ったみたいに笑いだしたんだ。

甲高い声で、俺の顔を見ながら、ずっと笑ってる。ずっと。ずっと。

それで、段々と目の前が暗くなってくのを感じた。

 

――で、気が付いたら俺は警察の取り調べを受けてた。

その女の笑い声以降の記憶が無い。警察と嫁の話では、俺は駅前の大通りに全裸で寝てたらしい。とりあえず俺は、友人と昼間からしこたま酒を飲んだ……ということにした。警察も嫁も、なかなか信じてくれなかったし、ドラッグじゃないの? とか疑われたけど、とにかくその女のことは言えないし、多分一生の中でも一番頑張ってウソをついたと思う。

 

数日して、その辺で少し有名だった坊さんにこの話をしに行った。思い返せば思い返す程、やっぱりお稲荷さんの上に家建てちゃったせいじゃないかと思ったから。その坊さん、除霊とかもやるって聞いたのも理由の一つ。

案の定、その坊さんには物凄く怒られた。

「妖怪だの怪異だのは別としてですよ、そんな罰当たりなことは金輪際しないと誓ってください」

って。反省した後で、「結局その女はなんだと思いますか?」って聞いてみた。

そしたら、「おさん狐だ」って言われた。

よく、尻軽女を女狐って言うだろ? あれの語源になってる妖怪らしい。

美人に化けて、男を騙したりするんだとか。正に、って感じで恥ずかしくなった。

駅前のあの城みたいな家も、どれだけ探しても見つからなかったし、これはマジに化かされたんだ、と思った。

その坊さんには恥ずかしがらず全部のこと話したんだ。そしたら、やっぱりお稲荷さんは建てなおしてお供えでもした方がいい、って言われた。後日、それは実行したよ。あと、最後に茶化された。

「狐につままれた、という言葉は聞きますが、狐に乳首つままれたのはあなたが初なんじゃないですか?」

と。うっさい。

 

この話をなんでいまさら書こうかと思ったか、というと、実は昨日娘に気になること言われたからなんだ。

「あのキツネさんがね、ありがとぅ、って言ってたよ」

って、唐突に娘に言われたんだよな。

最初にも書いたように、信じようが信じまいがなんでもいいけど、お稲荷さんだけは気を付けて。危うく家族崩壊の危機だったw