妖怪うぃき~現代にも現れる妖怪達~

妖怪……いるんですよ、現代にも。現代で起きた、妖怪達の目撃情報を紹介いたします。

放置しすぎて更新する気概も無いので、図鑑の方に統合し始めてます。過去の記事も一部図鑑へと移しているので、妖怪うぃき的妖怪図鑑の方へお越しくださいませ。

防犯カメラに映った一つ目小僧

f:id:youkaiwiki:20120725095906j:plain

一つ目小僧

 

私はコンビニで夕方から働いている学生です。

先日、バイト先で起きた事件について、皆さまのご意見を聞きたいので書き込みさせて頂きます。

 

夕方、私がいつも通り出勤した際、レジの裏側にある事務所の中が普段とは異なり人で溢れていました。何事かと思い、仕事仲間の女の子に聞いてみると、お化けが出たみたいよ、とニヤニャした顔で言われました。

意味がわかりませんでした。お化けが出たという言葉そのまま受け取っていいのかどうか。しかしその女の子のニヤニヤを見て、たぶん全く違うことなのだろう、と想像していました。

事務所を塞いでいたオーナーに挨拶をし、(オーナーは空返事でした)事務所内のタイムカードを押した私は、みんなが見ている防犯カメラの録画映像を見て驚きました。

コンビニの入り口上部に設置してあるカメラの映像で、幼稚園ぐらいの男の子がパタパタと店内に駆け込んでくる映像です。夏に差し掛かったばかりですが、その男の子は可愛い模様の浴衣を着ていました。盆踊りでもあったのかな? と私はその時考えていましたが、まだ時期が早すぎる気もしました。

 

その男の子が雑誌の並ぶ棚の前を通る際に顔が映るのですが

……なんと目が一つしかないのです。

それも、防犯カメラの粗い映像で解るような、大きな目。口のすぐ上から、額の上部までもある大きな目。

私は思わず「え?」と声を出し。その場で映像を見ているみんなの顔を見ました。

みんなは、もう何度もこの映像を確認しているようで、驚きではなく、何かを探すような真剣な目でモニターを見ていました。

「これって、なんですか?」

私はすぐ後ろにいたオーナーに聞いてみました。

普段から優しい笑顔の中年のオーナーも、この時ばかりはかなり複雑な顔をして、わからん、と言いました。

「おい。また4番のさっきの、見せてくれ」

オーナーがモニターをコントロールしていたこの店の店長に声をかけました。

店長は、慣れた様子でモニターに映る映像を切り替えました。

映し出されたのは飲料ケースの前。ケースの向かいでは、いつも昼に働いているフリーターの男性が品出しをしていました。そういえば――その男性の姿はここにはありません。

モニターには、さっきの男の子が真っ直ぐにバイトの男性へと近づいていくところでした。そして何か声をかけたのでしょう。男性が男の子の方を向きます。

「ンバァァア!」

突然、それまでは僅かな店内の環境音しか聞こえていなかったマイクが、物凄い大きさの男の子の声を拾ったのです。

私も、その瞬間思わずビクっとなってしまいました。

映像では、男性が目を丸くして男の子を見て、そのまま白目を剥いて倒れる様子が映っていました。……なるほど、それで男性はここにいないようです。

その時の男の子の表情は、惜しくもどのカメラにも映っていないようでした。

男の子は、満足したかのようにそのまますっと映像から消えます。

「え? これで、帰っちゃったんですか?」

私はオーナーに尋ねました。

「いや。それで終わりなら、ただの化け物か、子供のイタズラで笑えたかも知れん」

モニターの映像が、また最初の入り口上部のカメラに切り替わりました。

一つ目の男の子は、足取り軽く、店内を出て行くかに見えたのですが……。

なんと、丁度入口付近に設置してある冷凍ショーケースの中から、アイスクリームを一つ取り、そのまま出て行ったのです。

「わかっただろ? 万引きされたんだ」

オーナーが眉を顰めながら言いました。

 

一つ目の男の子が他に何か取っていないか、それを確認するためにみんな必死に映像を見ていたらしいのです。

店長が、少し嬉しそうにしながら、

「でも、一つ目小僧に万引きされたっていうのはちょっと自慢できるかも知れませんね。妖怪、現代に現る! とかって集客もできるんじゃないですか?」

とおどけて言いましたが、オーナーは笑いませんでした。

「警察に一応言いましょうか?」

手のひらを返してマジメになった店長がオーナーに尋ねました。

しかしオーナーは、渋い顔で首を横に振るだけでした。

 

その時の私は、日頃から万引きがかなり多いこの店だからこそ、オーナーは妖怪だといえども許せないのだろう……と思っていました。

さらに、妖怪が出た、と通報するわけにもいかなかったんだろうと私は思いました。

そもそも、あの男の子が妖怪だった、という風に真剣に思っていた者はいなかったと思います。私は、以前何かで読んだ一つ目になる病気を患った男の子なんだろうと勝手に思っていました。

不思議なことですが、万引き以外にはこれと言って悪さをしなかった(おどかしたのを許せば)一つ目の男の子は、なぜか私達の目に「あたたかい何か」として映ったのです。これは、バイト仲間の数人も同じようなことを言っていました。

「心が少し幸せな感じになった」と。そのことについて話した結果、もしかしたら本当に、害のない、イタズラ好きな妖怪一つ目小僧だったのかもね、なんて話したりもしました。

 

――ここまでは、まだ笑える、少し不気味な話。しかしこの後に起きた出来事は、とても笑えるようなものではありませんでした。

 

一つ目小僧事件から一週間後、オーナーが自殺したのです。

自宅のマンションから飛び降りた……とのこと。

オーナーは複数のコンビニを掛け持ちで運営していたので、誰もがそこから来る心労だと思っていました。誰もその時点では一つ目小僧との関係など考えていなかったのです。

しかし、オーナーの死後、店長や、古株のアルバイト、さらにはオーナーの奥さんの話等が様々な形で飛び交い、私のような学生アルバイトにまで聞こえる噂となって耳に入ってきたのです。

その噂、話をまとめると、

・オーナーの自殺は一つ目小僧の出現によるものだった。

・オーナーは発狂しそうなほど、あの事件の夜苦しんでいた。

・万引きの多いこの店で、万引き者を捕まえた際には必ずオーナーが対応にあたっていた。そして、オーナーは手ひどい暴行や猥褻な行為を万引き犯に対して強要していた。

・コンビニのオーナー業務というのはかなり難しいものらしく、複数店舗を運営していたものの多額の借金を抱え、辞めたいのに辞められない状況だった。

・オーナーが警察に通報しないのは、オーナーが万引き犯に対して行っていた行為が露呈するのを防ぐためだった、らしい。

 

今書いた話だけでも私の優しいオーナーというイメージは崩れてしまっていました。

そして、オーナーが自殺するほどに恐れた一つ目小僧。

これは、オーナーの奥さんからの情報で、

「オーナーが運営していたコンビニ全店舗に、万引きする一つ目小僧が出現していた」

というものがありました。

おそらくオーナーは、万引き犯に暴行を加えていた自分への戒めとして、万引きする一つ目小僧が現れたと信じ込み、追い詰められていったのでは? とみんなは考えています。

 

ただのイタズラ好きな筈の一つ目小僧ですが、この件では恐らくオーナーに捕まる為にわざと万引きをしたのだろうと私は思っています。

そして、オーナーに反省させたかったのでは? と。

しかし一つ目小僧も、まさか自殺されてしまうとまでは思わなかったのではないでしょうか?

辛いから、怖いからと簡単に命を捨ててしまう。

私には、一つ目小僧の方こそ、そんなオーナーにがっかりしているのではないか? と思っています。

妖怪という言葉すら聞かなくなったこの現代ですが、なんだかその理由が少しだけわかったような気がしました。

 

――そういえば、ほんの最近、オーナーの奥さんから聞いた不思議な話があります。

オーナーのお墓に、「アタリ」が供えてあったというのです。

最初意味がわかりませんでしたが、どうやらアイスの棒の「アタリ」だったようです。そして、そのアイスは、あの日一つ目小僧が盗んで行ったアイスと同じものだったとか……。